敗戦国イタリアの「I」一文字の保持 [JJ1WTL]

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じつは寝返っていたイタリア

さて,どうしても避けて通れない,敗戦国イタリアの「I」一文字の保持の件について, 覚悟を決めて追求してみましょう.
私が見かけただけでも,

「早期講和引き替え説」
「マルコーニ生誕国説」

など(のガセネタ)が出回っています.しかし結論から書くと,

「イタリアは連合国だった」

――からです.


大戦末期のイタリアのうごき

「アホなことぬかすな」という方のために, 第二次大戦末期のイタリアのうごきを以下にまとめます.
“連合国だった”ことがお判りいただけるでしょう.

昭和18年10月14日 朝日新聞 夕刊昭和20年7月16日 朝日新聞

「イタリアは連合国に寝返った」とは,義務教育で習う範囲を超えていますよね.ですので我々の中で,

日独伊三国同盟は戦争に負けました.そして,
日本は J から JA-JS に,
ドイツは D から DA-DR に,国籍識別が削られました.なのになんで
イタリアは Iの1文字 のまま許されるの?

というナゾが,うごめいていたわけです.

(なお,ドイツは一旦は DA-DM まで減らされています.別掲.)


1946年 モスクワ国際電気通信予備会議

また1946(S21)年に,『モスクワ国際電気通信予備会議』が持たれています.
このときの議事録が日本ITU協会に奇跡的にありました.
それによると,周波数と呼出符号列の召し上げの対象となっているのは,「ドイツ」と「日本」だけです.以下に,肝心な部分を抜粋して紹介します.

中国代表が,「(1) 一文字が欲しい」……「(4) ドイツと日本は召し上げ」と言っています(最後の文で,"Fourthly, call signals originally assigned to Germany and Japan should be subject to redistribution."):


議長も,「ドイツと日本に割り当ててあった分は再配分かもね」と総括しています(2行目から "... some of the call signals formerly allocated to Germany and Japan could be redistributed, ..."):

親会議あてには,「ドイツと日本のコールサインは再配分すべきと原則合意」と報告されています(3行目から "... there should be redistribution of the German and Japanese call signals, ..."):

――ということで,この1946年の時点で,イタリアのイの字も出てきません

したがい,翌1947年のアトランティックシティ会議で,「もし早期講和するならば I の全部をあげよう――という付帯決議がなされた」というお話は, 明らかに誤りです.

1947年の割当表は別掲します.そこでは「I」は無条件でイタリアのものですし,付帯決議もありません.


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Oct. 31, 2009, Ryota "Roy" Motobayashi, JJ1WTL