“Ham”にちなんだJH, “Radio”にちなんだJR――というのは,巷間語られるとおりかもしれません(以下の引用文もご参照ください). しかし,そもそも,JAのあと,なぜJBに移らなかったのでしょう?
この件については,CQ誌に次のような説明がありました:
このプリフィクスは,JA1からスタートし,その次のものを決めるとき, アルファベット順であればJB1になるのですが, 国際電々の実験局(コールサインの組み立てがアマチュア局と同一)がすでに使用しており, 「それでは,何にするか」ということで関係者で協議の結果, JH1が決まりました.
JH1シリーズのコールサインが終了したときも, CWで打ちやすいもの,実験局に使用されていないもの等々を考慮して, JR1が決まりました.
JR1シリーズのコールサインが終了する頃には,アマチュア局数もどんどん増加し,その都度, どれにしようか?などと考慮することはなく,アルファベット順でやろうということで, その後はJE,JF,JG,……JSの順で現在に至っています.
出典:1984年8月号pp.305-319「特集 ウソ?ほんと ハム雑学インフォメーション」の中の,p.308「JQ1の次のプリフィクスはJR1ではない」
さて,
“アルファベット順であればJB1になるのですが,国際電々の実験局(コールサインの組み立てがアマチュア局と同一)がすでに使用しており”
とは,何を見ると確証が得られるかというと,意表をついて『周波数の割当原則』の中に書かれていました:
このように,コールサインの形式が,
と定められています.
これでは,もしアマチュア局がJBを使ったら,KDDの実験局と区別が付けられません.
ですから,アマチュア局ではJBを用いないこととなりました.
まさに,CQ誌1984年8月号の主張と一致しています.
ただし,若干の違いはつぎの3点です:
2004年9月時点の話ですが,総務省のライセンスサーチで実験局を探すと,実際に以下のような局がヒットしました:
呼出符号 | QTH | 用途 | ||
---|---|---|---|---|
JB2XA | 三鷹市 | KDDI株式会社 | インマルサット・システムの人工衛星局 | 展示用 |
JB2XC | 厚木市 | |||
JB2XD | 川崎市幸区 | |||
JB2XL | 千代田区 | |||
JB2XM | 千代田区 | |||
JB2AB | 小笠原村 | 通信実験用 |
『周波数の割当原則』はS32(1957)年に制定されたのですが,その巻末に『別表 第XI 呼出符号及び呼出名称の割当基準』というのが付いていて,そこに今回の件が書かれています.その中からとくに関連する表――上に拡大した部分の全貌――を,抜き出してみましょう.OM方には見慣れた(or 懐かしい)表かもしれません:
注.現在は全面改定され,「識別信号の指定基準」として規定されています. とはいえ上述の区分の〈おもかげ〉は残っています.