初期のプリフィクスの選択の議論を,再度引用します:
このプリフィクスは,JA1からスタートし,その次のものを決めるとき, アルファベット順であればJB1になるのですが, 国際電々の実験局(コールサインの組み立てがアマチュア局と同一)がすでに使用しており, 「それでは,何にするか」ということで関係者で協議の結果, JH1が決まりました.
JH1シリーズのコールサインが終了したときも, CWで打ちやすいもの,実験局に使用されていないもの等々を考慮して, JR1が決まりました.
JR1シリーズのコールサインが終了する頃には,アマチュア局数もどんどん増加し,その都度, どれにしようか?などと考慮することはなく,アルファベット順でやろうということで, その後はJE,JF,JG,……JSの順で現在に至っています.
さて,ここでいう “実験局に使用されていないもの” を検証してみます.アマチュア局に以下のプリフィクスが割り当てられるまでの利用状況を探ってみます:
・JH……1965(S40)年7月1日決定,1966(S41)年発給開始,
・JR……1969(S44)年決定,1969(S44)年9月29日発給開始.
官報のオンライン検索で見つかる限りの,最初の例を下表に示します:
列 | 呼出符号 | 免許人 | 承認日(年.月.日) | 配分先 |
---|---|---|---|---|
JA | 国際電信電話,アマチュア | |||
JB | JB4B | 国際電信電話 | 1956.11.25 | 国際電信電話,航空機(のち削除) |
JC | 【保留】 | |||
JD | JD2XB | 日本電信電話公社 | 1958.6.26 | 日本電信電話公社 |
JE | ||||
JF | 漁業用 | |||
JG | JG2Y | 電波監理委員会 | 1950.8.29 | 官公庁 |
JH | 漁業用 | |||
JI | 運輸省(航空業務) | |||
JJ | JJ2N | 八欧無線 | 1950.7.25 | 特別業務,防衛庁 |
JK | 放送中継,簡易無線 | |||
JL | 海上保安庁 | |||
JM | 気象庁 | |||
JN | 海上保安庁 | |||
JO | JO2F | 日本放送協会 | 1950.5.18 | 放送局 |
JP | JP2BG | 国家公安委員会 | 1951.5.30 | 警察用 |
JQ | JQ2A | 東京都 | 1950.7.1 | |
JR | JR8A | 日本国有鉄道 | 1950.7.1 | 日本国有鉄道 |
JS | JS2RC | 東京芝浦電気 | 1957.8.6 | 一般私企業者 |
たしかに,JHは空いていたことが判ります.ただし,官報での無線局の告示は昭和30年代に入ると省略されており,100%万全な調査ではありません.
つぎのJRは国鉄で使用中のものを強行して採用.おそらく,サフィックスの長さで棲み分けることにしたのでしょう.すなわち,「国鉄の実験局が1~2文字」「アマチュアが3文字」――というわけです.めでたしめでたし.
...が.
1972(S47)年に沖縄が復帰すると,
・国鉄の四国の実験局JR6$$ と
・沖縄のアマチュア局のJR6AA-NZ
とで,割り当て空間が重なってしまいました.
そこで,以下に示す1987年時点の割当表――『電波受験界』(1987年5月号)から――のように,JR6AA-NZは実験局からは除外する旨,例外的に規定されました.(ただし,これだとJR6RL(沖縄のJARL地方局)がはみ出してしまうので,さらに例外規定が追加されていたと思います.たしか.)
この時点ではJCは解禁され,通信開放後のNCC(新規通信事業者)に割り当てられています.
繰り返しですが,この表は効力を逸しており,『電波法関係審査基準』の中の,『識別信号の指定基準』に置き換わっています.
『識別信号の指定基準』は,実験局のコールサインに以下を用いるよう,定めています: