WRC-03によって,アマチュア局のサフィックスは,一般に4字まで,催事に際しては無制限 ――ただし,いずれも最後はアルファベットのこと――となりました. この結果を受けた「平成16年6月24日総務省訓令第39号」によって, 日本では記念局に対し1~5字までのサフィックス――もちろん最後はアルファベットでなければならない――が認められるようになりました.
従 来 | 現 行 | |||
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ITU WRC-03より前 | 総務省 H16年訓令39より前 | ITU WRC-03以降 | 総務省 H16年訓令39以降 |
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一般の局 | 3文字まで | 2,3文字 | 4字まで | 2,3文字 |
特別催事の局 | 3文字 | 無制限 | 1~5字 | |
最後の字 | ― (*) | ― (*) | 文字 | 文字(“アルファベット”) |
注!:ITU,総務省などでは,表現として『字』と『文字』とを,明確に区別して用いています.
『字』=『文字(アルファベット)』+『(アラビア)数字』 です.
英語でも同様で,character = letter + digit となります.
最後の字がアルファベットでないといけないのは, 「数字で終わる形」のコールサインが,ほかの業務の局に割り当てられているからです:
例 | 割り当て |
8J20 | 宇宙業務の局(勧告) |
8J200 | 宇宙業務の局(勧告) |
8J2000 | 船舶局(無線電話の場合のみ,この形が可) 陸上移動局 |
8J200000 | 船舶の救命浮機局 |
これで1文字サフィックスの雨あられ...と思いきや,遠慮がちな日本人だからでしょうか,あまり求めませんね. FIFA World Cup 2002のときに例外で得た「8J1C」などの10局のほかは, せっかくの新ルールの下での初年度では,3局だけでした:
最長の5字サフィックスもなかなか人気があり,
といった具合です.
「EQ」は教科書的には満点ですが,本来口語的には「Q」で十分かな.
Hey, baby, there's somethin' on the news about the quake.
とは,電信の活躍が地球を救う,映画『インデペンデンス・ディ』の一セリフ(ウィル・スミス).
「117」は1月17日なのですが, 深刻なのは「8N3」の「3」が余計な点です. ルール上,近畿管内では「8J3」「8N3」で始まることが必須なので,やむを得ません. パブリックコメントの際に戦ったのですが,ダメでした (その代わり,サフィックスにアルファベットだけではなく,数字を入れてもいいことにはしてくれた). おそらく,“地方局別の数字”(ようは,コールエリア)の部分まで「0~9」を任意に選ばせてしまうと, 各総通相互間で確認のためのやりとり――「ウチで使っていい?」――が発生してしまうためだと,想像しています. 今回の「8N3117EQ」で,さっそくこの問題が露呈されてしまいました.
仮に「3」を取り去るとすると,(1) 常置場所をJARL本部にして,つねに「8N117EQ/3」で50W運用する, または,(2) 例外として総務本省に掛け合う――あたりでしょうか.
以下は敗戦の記録です:
世界的には「全3字」のものが最短です. 一番古いのは,サンマリノの「M1A」でしょうか? US-CQ誌の1948年9月号にQRTの紹介がありますので,それよりも前からあったようです. しかしMは,当時も今も「イギリス」の有している呼出符字列なのが問題.
有名な「サフィックスなし」のヨルダンのフセイン国王の「JY1」については, アイコム社のBEACONには,「1972年6月4日」にJA9AA円間さんが交信した件を掲載しています. ですので1972年以前からであったことは確かです. (ところで,当時のITUのRR(無線通信規則)によるサフィックスの規定は"a group of not more than three letters"です. これを「サフィックス0文字も許される」と解釈するには,無理があると考えます.)
アメリカでは,火星探査船バイキングを記念する「N6V」が1×1の一局目でした. こちらは1976年ですので,フセイン国王のほうが古さでは勝ちます.
さて,これら3字コールの間の同点決勝は,「モールスで打ったときの長さ」によって成されるべきでしょう. RRに乗っ取った正しい形での最短形は「1字の国籍+1数字+1文字」です.
(1) まず,1字国籍はB, F, G, I, K, M, N, R, W, 2.
この中で,モールスでいちばん短いのは,イタリアの持つ,短点が二つの「I」;
(2) つぎの数字で最短なのは,短点だけ五つの「5」;
(3) サフィックスとなる文字で最短なのは,短点一つの「E」.
ですから,結局,
がRRに乗っ取った,正しい形での最短形となります.
で,これはまだ発給されていないらしいので,2番目に短い「N」を使った,アメリカの
を探ってみると,ありました!
1998年10月9~20日の「JOTA - BUTLER CO. CHAPTER」の際に,最初に使われています(JOTA: Jamboree on the air). これが〈実績〉としてのアマチュア局最短のコールサイン.そのあと2回使われています. (なお1910~20年代ですと,各国の「5EE」に軍配が上がります.)
さらに,仮にRRを無視するとなると,「E5E」が最短. もちろんこのとき正しくは,「E5#E」のように,もう一つ数字が必要です. さらに「JY1」よろしくサフィックスなしで強行すると, 「E5」が超最短となります. 輪をかけて,数字さえも取り去る というなら,「I」の1文字だけとなります.
コールサイン | 運用年 | 評価基準 | |
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M1A | 1948年以前から | 世界最古? RR違反(Mはイギリスのはずがサンマリノ) | |
JY1 | 1972年以前から | フセイン国王;サフィックスなし | |
N6V | 1976年 | アメリカで最古(火星探査船バイキング記念) | |
I5E | (なし) | RRに則した最短 | モールス符号での短さ |
N5E | 1998年以降数回 | 運用実績のある最短 | |
各国の5EE | (戦前) | 戦前まで含めた場合の最短 | |
E5E | (なし) | RR違反(正しくはもう1数字必要でE5#E) | |
E5 | (なし) | さらにRR違反(正しくはサフィックスが必要) | |
I | (なし) | 輪をかけてRR違反(正しくは数字が必要) |
さて,わが日本では「JE5EEE」対「Aが入るけどサフィックス2文字の JA5EE」の戦いですが, 数えてみると,ともに「41短点」で引き分け.
記念局を含めて良いなら「8N5E」が「39短点」で, 現行の「識別信号の指定基準」の中で,日本最短となり,勝利します. 「愛媛○○記念特別局」なんてのにいいかも.