茅野の土地

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1973年,ときは“狂乱物価”.

このさなか,現物による資産保全にうって出たのでした.
しかし...結果として...この財テクは失敗でした.

グラフの前提:

田中貴金属のWebから.
日経平均.
定期預金
郵便局の1年物.
定期〜ニューMMC〜ニュー定期1000万円以上 など利率のいいもの.
20%を税金として引きつつ預け替え.(注.公益法人なので,税は引かれないそうです.)
物価
インフレ率を単純積算.
一方,「消費者物価指数の推移」(http://www.garbagenews.net/archives/2064125.html)では,「2.7倍」となっています.
土地
茅野市の公示地価の,全箇所――3〜5ヵ所――の平均 (∵入れ替わりがあります).

ちなみに,もし「外貨」ですと,当時(1973-10-31)は「USD 1=JPY 266.83」でしたので,“大失敗”となります.


経緯

JARL視点

1973-09-15#152理事会,財産保全のため,以下を決定:
(1) 約3千万円程度の不動産(土地)購入,
(2) 『臨時財務委員会』の設置,
(3) 委員長JA1AN.
1973-09-29『臨時財務委員会』の委員を委嘱:
委員長…JA1AN,
委員…JA1AR,JA1XP,JA1PCY,JH1XEO,JA2JA,JA0IA.
1973-10-19#3委員会,長野県茅野市原山の土地購入を決定.
1973-10-31登記完了.
1973-11-24#153理事会,『臨時財務委員会』からの報告を了解.
1973-11-25評議員会,会長からの説明を了解.
1974-02-23〜24#155理事会,「登記を実測面積に変更しない」と決定.
1974-05-26#16通常総会(於 名古屋),執行部答弁.
2011年総会で「理事会の判断で売る」ことを承認.
2016-06-29有限会社W&Mに売却.

土地視点

(地番は「茅野市玉川字原山11400-116, -117, -118, -119, -131」の5筆です.)

もともと「枝番が付く前の11400番まるまる」は,39集落のための広大な共有地.
273町=2.7km2(1.6km四方相当).
1947(S22)年のちにJARLが取得する部分は,「泉野村中道」集落だけのものに分割.
1948(S23)年地域住民が買い取り.
1973-11-01JARLへ(JARL側の発表では「10-31」で,1日ズレあり).
2016-06-29有限会社W&Mに売却.

5筆の位置関係


JARL NEWS 1974年3月号p.32 おしらせ

資産運用のために土地を購入!

JARLは,つぎのとおり土地を購入し,昨年10月31日に登記を完了しました。
(1) 場所 長野県茅野市玉川字原山 11400番地
この場所は,中央線茅野駅からバスで約40分の八ヶ岳中央農場南側に近接した山林の原野です。
(2) 面積(実測値) 7,912m2(約2,393坪)
(3) 購入価格 23,932,000円(この内に立木代金2,393,200円を含んでいます)

 この土地を購入するまでの経緯をつぎに説明し,会員各位のご理解を賜りたいと存じます。

第152理事会で決定

 JARLでは,数年来,財産を保全するため,国債などを購入してこれに努めてまいりましたが,近年物価上昇が予想されるため,不動産としての土地購入の構想をもっておりました。
昨年9月15日に開かれた第152理事会において土地購入の提案があり,審議の結果,財産を保全するため約3千万円程度の不動産(土地)を購入することと,さらに調査の上購入するための実務を行う臨時財務委員会の設置と,委員長にJA1AN氏が就任することが決定されました。

 この理事会では,今回土地を購入するのは,JARL会館等の建設を前提とするものではなく,あくまでインフレ等によっておこる貨幣価値の下落などを考慮し,資産を効率的に運用することが理事会の責任である,という面から積極的な審議が行われました。

 審議の課程においては,定款第39条の総会附議次項である「重要な財産の取得および処分」の規程にていしょくするのではないかという問題についても討議が行われましたが,前述のような目的であれば,ていしょくはせず,むしろ定款第47条(本連盟の資産の管理及び運用は理事会の決議を経て会長が行う)の規程によるものであるとの見解によって,理事会は土地の購入方針を決定しました。

臨時財務委員会で検討

 昭和48年9月29日付で臨時財務委員会の委員長にはJA1AN,委員にはJA1AR,JA1XP,JA1PCY,JH1XEO,JA2JA,JA0IAの各氏が正式委嘱されました。

 委員会は理事会の方針にしたがって計4回の委員会を開催し長野県内の三井の森,原山,原村,富士見村,軽井沢,北海道大沼国立公園,南伊豆,那須高原など12件以上の分譲地について資料をもとに検討,討議を行い,また,上記の長野県内の各分譲地を比較検討するため,現地調査も行い,同年10月19日の第3回目の委員会において,長野県茅野市原山の土地を購入することを決定しました。 この決定にもとづいて同年10月31日に購入契約および正式な不動産登記の手続きを完了しました。

第153回理事会,評議員会で報告

 続いて昭和48年11月24日に開催された第153回理事会においては,臨時財務委員会の土地購入までの詳細な経過の説明があり了解され,翌日の評議員会においても会長から土地購入の目的,定款上の問題点,購入経過について説明があり,評議員各位との質疑応答が行われ,了解されました。

 登記簿上の面積は3,294m2(約996.43坪)で,購入契約による面積は実測の7,912m2(約2,393坪)で,登記面積と異なっておりますが,これは山林原野の場合縄延びと称して異ることが世の中の通例でありますが,実測の面積を正式に登記するかどうかなどの事務手続きは,つぎの理事会で審議することになっております。

 以上が今回の土地の購入までの概要ですが,JARL会館建設までの期間,この土地をより有効に活用する方法を積極的に検討して行きたいと思っております。

JARL NEWS 1974年4号p.13 #155理事会報告

11.不動産購入に関する事務手続について

購入した土地の登記簿上の面積を実測した面積に変更するかどうかについて討議の結果,変更しなくとも問題はないので変更しないことに決定しました。

JARL NEWS 1974年7月号pp.13-14 JARL第16回通常総会 会場における質疑応答から

(表形式にて)

QなぜJARLは土地を買ったのか。
また,会員にアンケートを取って決めてもらいたかった。
Aインフレによる貨幣価値の下落を懸念し,定期預金よりも土地の方が良いと考えた。
会員の皆さんの大切な財産を保全するため資産の形を変えたと理解されたい。
土地の購入については,定款第39条第4項の重要なる財産の取得になるかどうかということについては,たとえばJARL会館を建てる土地であるなど,JARLの事業目的に使う土地であれば,重要な財産の取得であり,皆さんの意見を総会で十分伺う考えだ。
インフレが日々進行する事態であり,定款第47条にある,資産の管理ととうことを理事会で真剣に考慮し,数千万円の現金を手元においておくということは,日々目減りすることがわかっているので,臨時財務委員会を作り,また郵政省に会長が行き相談した結果,財産保全の目的であればよろしいとの了解も得られたので,この茅野市の土地の購入を決定した。
執行部を信頼していただきたい。
Q交通に時間のかかる遠い土地を買うより,東京近郊の土地を買った方がより有利ではないか。 A同じ金額では東京ではいくらも買えない。
換金性を考えると,まとまった所がよい,という結論にしたがい何ヵ所か検討し選定した。
Q購入した土地の広さは実測か登記上か。 A実測で7,912m2である。
Q流動資産を固定資産にしたことは,換金性簡単ではないと思うが A坪数が多い方が売りやすいということから山林原野を求めた。
Q土地の実測は誰が行ったのかまた隣接地主の承諾を得たか。 A隣接地主立会いのもとに両角測量事務所が行い隣接地主の印鑑証明を付した実測図もととのえてある。
Q地積が登記と実測で異なるので,地積訂正を行うべきではないかまた,購入した土地に道路・水路が入っているが。 Q登記簿と実測と違いがあるのは,慣習上縄延びというのがあって多いところでは3倍くらいになることもあり,売買のとき実測し確認して売買することになっている。
今度も隣地地主立会いのもとに確認した。
地積訂正は社会慣習上のワクを越える必要がないということから行っていない。
道路は公図上認められたものがあるが松の木の根が一本ひっかかるていどのものであり,また水路は端を少しかすめて通っている程度である。
税金の問題も含めて法的に不備のないようにする。
Q土地は会員の会費で購入したのか。 A会費ばかりではなく,その他諸々の収入による財産全部の流動資産の集積されたもので購入した。
Q会員に土地は貸さないということだが。 A移動運用などの場合の許可はする。
立木や自然の保護,火災予防等には注意されたい。
Q土地を購入するまでの委員会の審議経過について伺いたい。 A臨時財務委員会では,まず理事会の不動産購入にかかる審議について再確認した。
JARL会館との関連性,今後の経済変動の見通し,土地購入に関する税性,換金性,利用性についても検討した。
候補地としては茅野市の三井の森原山,原村,富士見村,北海道の大沼公園,軽井沢,南伊豆,那須高原等に12ヵ所である。
価格が適正であること,投機的でないこと,換金ができることを条件として考えた。
東京の土地はある程度まとまったものでは数億円となってしまう。
数千万円ということだと地方になってしまい絞られ,その結果茅野市の土地ということになった。
Q茅野市の購入した土地は市街化を抑制するための調整区域ということだが,宅地にする場合など手続きが大変だと思うが。 A都市計画があるためにかえって良いこともある。
Q公益法人がこれまでしてやる必要があるのか,定期預金で十分ではないか。 A社団法人として投機的でない範囲で売買できると思う。
現金だと年間かなり目減りしている。
財産保全には土地が良いと判断した。
Q限りある国土を有効に使うのが国民の立場だ。
他に方法はなかったのか。
AJARLも昔とは違い定期預金,敷金というような形で財産がある。
個人の財産保全には貯金・土地・株という財産の三分法という考え方がある。
ありきたりかも知れないが土地という案が出た。
長期的に見れば土地というのは良い財産だと思う。
Q購入した土地を紹介した人は,JARLへ話す前に他にも話をしたと聞いているが,不都合ではないか。 A他に話をしてもいけないことではない。
Q今後あまった金が出た場合,土地を買うのか。 A社会情勢に応じて慎重にその時々にもっとも良い判断をしたい。
また,このようなときには皆様の意見を十分に聞きたい。
Qこの土地を処分するときは,会員にはかるのか。 A目的を達成したらそのときに理事会で会員にはかるかどうかも含めて検討したい。
Q2〜3千万円のものが簡単に理事会で売り買いできるとしたら危険なことだ。 Aコミュニケーションが悪かったことについては反省している。
Q将来この土地は新しく理事になった人の重荷にならないか。 A急に土地の値段が下がるとは考えられない。
この土地の利用なども考えながら保全して行きたい。
将来きっと良かったと思うときが来ると思う。
Qこれから先土地を買うときは総会にかけると約束してもらえないか。 Aこれから先,世の中の事態がどうなるかわからないので,年1度の総会にかけるのは難しいと思う。
しかし決して会員の皆様を無視しているわけではない。
評議員の方々の意見を聞いてやって行きたい。

第97回評議員会 審理 (2001年5月26日,於 富山)

http://www.mdb.gr.jp/DXer/JARL3.html から,表形式にて)

QS48-9年に購入したJARL土地の現在の状況は、価値はA売却した場合、購入価格を上回るのでは。
価値は数倍になっていると思われる。
事務局でも、専務理事、海江田部長が現地を見てきた
Q長野の土地の評価はA購入時坪1万円で約1000坪。
現在は坪5〜6万円と思われる

2011年,売り出し


JA3HXJのブログから.

2016年,売却完了

ホワイトナイト,登場.名古屋の『有限会社W&M』殿です.
以下,念のため5筆――11400-116, -117, -118, -119, -131――全部です.

登記









「法人移行時にさぼって手続きしなかったな」とか
「事務局の移転時にさぼって手続きしなかったな」とか 言ってはいけません:-)

“隣が工場”になってしまった土地がいまや別荘地として売れるはずも(たぶん)なく,太陽光発電所というのは,妥当な落としどころかもしれません. (太陽光発電ノイズと戦うアマチュアさんがいらっしゃることは存じ上げております....)

なお面積を整理しておきますと以下のとおりです:
・登記簿上 … 3,294m2 (約996.43坪)
・実測    … 7,912m2 (約2,393坪)

この面積(実測)ですと,“メガソーラー”とまではいきませんが,500〜800kWくらいは出せそうです.
(参考:https://www.daiwahouse.co.jp/ene/case/megasolar.html
     http://standard-project.net/solar/sangyo/menseki.html .)

W&M

ホワイトナイトさんについてGoogle先生にお伺いしますと,以下のURLが引っかかってきます.
が,これ以上は先生もご存じないご様子.

http://法人マップ.com/detail/3180002059758
    (会社法人等番号: 1800-02-059758)

法人登記を参照しますと,以下のとおりです:
・設立 平成17年11月29日
・資本金 500万円

同じ住所にもう二社あります:
○合同会社DJエナジー
○合同会社DJパワー


この土地の前史

こんな駅裏の一等地に法務局(支局)があったとは,諏訪には20〜30回は来ているのですが,まったく気が付きませんでした:

閉鎖登記

日本全国自宅から取れる,「コンピュータ化された登記簿」と差がなく,期待した情報は得られず,無意味でした.

粗悪移記(そあくいき)

これをいただきました(5筆分計\3k). 左から,11400-116,-117,-118,-119,-131です.

旧土地台帳

さらに遡るべく,「旧土地台帳は閲覧できますか?」と訊くに,「コピーあげます,タダです」とのことで,持ってけドロボウ状態.これまで,旧土地台帳は「閲覧〜書き写し」しかできないものと信じていたのですが,それはハッピー.お言葉に甘えまして,分筆元を辿りつつ,

当該の5筆 → 11400-24 → 11400-6 → 11400-1

と繰り返し繰り出すお願いにイヤな顔一つせず(たぶん),ご対応いただきました. まとめますと,こんな推移になります(クリックで拡大します):

大元の「枝番が付く前の11400番まるまる」は,39集落のための広大な共有地でした.
「273町」ですから,2.7km2(1.6km四方相当)です:

それが戦後,のちにJARLが取得する部分は,S22年に「泉野村中道」集落だけのものに分割されています.
そして翌S23年に,地域住民のみなさんが買い取っています.
その後は,若干の相続・売買はありますが,基本はそのまま,JARLの手に渡っています.
直前にどこぞの理事が間にかんで“土地ころがし”して暴利を得た――とかは,ありません.


広さ

登記上

5筆個々に判りました:

地番広さ平米
茅野市玉川11400番1167畝3歩213坪704m2
茅野市玉川11400番1174畝120坪397m2
茅野市玉川11400番1181反2歩302坪998m2
茅野市玉川11400番1191畝30坪99m2
茅野市玉川11400番1311反1畝2歩332坪1098m2
2反13畝7歩997坪3296m2

JARL側の値では若干ズレて「約996.43坪・3,294m2」となっています.

実測

約2,393坪・7,912m2 です.


参考URL


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May 6, 2017, Ryota "Roy" Motobayashi, JJ1WTL